アメリカ大統領選挙は、バイデン氏(民主)の勝利ということで終わりそうです。しかし、アメリカの民意はほんとうに、そこにあったのでしょうか? 変な言い方ですが、ほんとうはトランプ氏が勝っていた。それが、いくつかの「奇跡的な(バイデン氏にとっての)幸運」が重なって、バイデン氏に傾いていった、ということではないでしょうか?
以上は、3日(第一木曜)午前の「世界はいま」で、わたしがお話ししたことの一部です。
以下、説明してみます。
「奇跡的な幸運」の第一は、投票数の大増加です。66.4%という数字は、1900年以来最高です。前回(2016年)大統領選と比べると、2200万票増えています。このうち約1000万票がトランプ氏の増加分、1200万票が、バイデン氏が前回のクリントン氏の得票より伸ばした票数です。
バイデン氏の勝因としてメディアがいうのは「反トランプ票の掘り起こし」でした。しかし、そんなことなら、トランプ氏の「トランプ票の掘り起こし」も、ものすごいものがあります。
メディアのいう「反トランプ票」とは、何だったのでしょう?
実は「性的マイノリティの投票参加」だったというのが、わたしの気づきです。
大統領選挙と同時投票だった連邦議会、州議会などの議会選挙は「レインボー・ウエイブ」がいわれました。ゲイ、レスビアン、性転換、ノンバイナリーなどを名乗る候補者の立候補が多く、200人も当選したのです。この人たちが「掘り起こした票」――仮に当選者一人当たり5万票としても、200人で1000万票になります。そのうえ、落選した候補者たちの「掘り起こし」も加算できます。バイデン票は、「バイデン支持」とは微妙に意味が違うように感じます。
第二は、多くの大手メディアが雪崩を打ったようにバイデン贔屓(反トランプ)に回ったことです。これについては、あとで説明します。
第三の、そして「決定的な幸運」は、「新型コロナ感染症の蔓延」です。
「アメリカが直面する最大の課題」を問われて「新型コロナ感染症」あるいは「医療問題」と答えた人は、ほぼ100%がバイデン氏に投票しています。この点での決め球はおそらく、トランプ氏の感染です。コロナ問題の深刻さを人々に印象づけました。
私の考えでは、レインボー・ウエイブや新型コロナが、「眠っていたバイデン票」を呼び覚ましました。
そして、それほどの僥倖に恵まれたというのに、バイデン氏は、あのギリギリの辛勝です。もし、レインボー・ウエイブがなかったら、もし、新型コロナの感染騒ぎがなかったら・・・間違いなくバイデン氏は惨敗です。バイデン氏は、新型コロナウイルスに感謝しなければなりません。
なぜ、トランプ氏は1000万票もの票を伸ばしたか?
わたしの考えは「反バイデン」です。バイデン氏を当選に導いた要因――性的マイノリティ、黒人やヒスパニック、新型コロナや人種問題に起因する秩序の崩壊(への不安)――そういったことすべてが、トランプ支持に向かいました。
今回の選挙があぶり出したのは、アメリカの「分断」どころか「分裂」だろうというのが、わたしの考えです。
アメリカは、実質的に二つの国に分裂してしまいました。
ひとつは、東海岸、西海岸の大西洋、太平洋に面する州からなる「沿岸国」です。
黒人、ヒスパニックが比較的多く、性的マイノリティに対する蔑視もありません。産業は、金融やAI関連がけん引し、劇場、大学、メディアなどの文化活動がさかんです。大卒が多く、思想的には進歩的(リベラル)な立場を誇っています。
もうひとつは、両岸諸州からなる「沿岸国」に挟まれた「内陸国」です。起伏のある丘陵地帯に農場が延々と広がっています。人種的には白人中心、主要産業は農業、学歴は何の価値もない世界。正々堂々、勇気といった昔ながらのアメリカ的価値が幅を利かせています。沿岸国の立場から見れば、「保守反動」そのものです。
今回大統領選の勝敗を決めたといわれるラストベルトは、沿岸国と内陸国のふたつの「国」がぶつかりあった最前線と解することができます。
今後を展望するなら、黒人やヒスパニックの増加、金融やAIの発展といった面からみて、これから勢力を伸ばすのは「沿岸国」です。
そのように考えると、今回の大統領選挙は、「内陸国」が勝てる、ほとんど最後のチャンスでした。「内陸国」は、新型コロナといった「余分なこと」のせいで、その勝利を逸してしまいました。
結論として思うこと。
バイデン新政権は、(国民の支持という点で)少数派政権です。何もできない(不作為)政権となる確率が高いように思います。(そのことが、「習近平の勝手次第」なのかは別の問題です)
もっといえば、アメリカはひとつ(一丸)ではあり得なくなりました。原理的にまったく異質な「沿岸国」と「内陸国」が、一つの国の指導権をめぐって争う状況を想定しなければなりません。
そんなアメリカは、これからの世界にとって、ものすごいかく乱要因です。そして、日本としては、そのことを想定して付き合うことが必要になるでしょう。
@店長の前職(大学教授)時代の担当ゼミ生の『Yゼミ卒業論文集;先ごろ若者気質』
Aフィールドワークで地域の方々と資料をまとめた『瀬田国民学校 学級日誌』、
Bチャイハナの日々 です。
@ではありのままの若者像を、Aでは戦争の時代にあっても明るく過ごした子どもたちの様子を、Bではチャイハナの日々の様子をお伝えしています
2020年12月03日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/188185858
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/188185858
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック