真夏のいまも雪をかぶったカラコラム山脈を眼下に飛びます。
レーで地上に降り立つと、なにやら雲の上を歩いているようで、足元がフワフワと落ち着きません。ある種の「夢見心地」。長い瞑想の果てに到達するという「悟り」というのは、こんな感じなのかもしれない、と思いました。
暗がりから明るいところに出ると(逆だったか? 実はあいまい)、目の前に黄緑色の輪が浮かんできました。めまいの兆候です。
そう、海抜ゼロメートルのニューデリーから、富士山頂にも匹敵する標高約3650mに飛び込んだのです。どうやら高山病?
中村師がいいます。
「半日間は安静にしていること。酒を飲んでも、テレビを見てもいけません」
尋ねました。
「寝てろ、ということですか?」
そして、教わったのが、(いささか耳の悪い勝手理解なのですが)「涅槃行」ということば。お釈迦様がなくなったときのように、右手を手枕に、足先をそろえて寝そべります。
それも、この高山病状態では「行」のひとつのかたちなのかなぁ、それにしても、「涅槃」って死ぬときのことだろう・・・というような、とりとめのないことを考えました。
翌日からは、「夢見心地」のフワフワは、ほぼ一切ありませんでした。それでも、上り坂や階段では、ちょっとの距離で息が切れるのでした。